・・・一、集団農場員が冬の間に入用な薪を切り出す附近の森林はただで貰える。納屋、小舎等はただで貰う。一、種、肥料などは非常にやすく、政府がくれる。一、集団農場員の家族で働けない者がある時はそれは集団農場全体が責任をもって養う。一、・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・何か耳新しい一つ話か思い出話が出るかと思って、心臓に氷嚢をあてながらも寝ないで柱にもたれ、明け方までいろいろな人に混っていたのであったが、誰もそんな話を切り出すひとは誰もなかった。母が二十代の時分、生れたての私をつれて札幌へ父とともに行って・・・ 宮本百合子 「母」
世間知らずで母親のわきの下からチラリチラリと限りなく広く又深いものの一部分をのぞいて赤くなって嬉しがったりおびえたりして居る私の様なものが、これから云う様な事を切り出すのはあんまり荷のかちすぎた又云おうと思う全部は必(して・・・ 宮本百合子 「無題(二)」
出典:青空文庫