・・・蔓頭の葛藤、截断し去る。咄。 芥川竜之介 「るしへる」
・・・「だってこの切断は全くわたしの見落としですもの。」「だからさっきから、わしは「待ちませんよ、」「待ちませんよ」と二三度も警告を発しておいたじゃないか。」「待ちませんはあなたの口癖ですよ。」「だれがそんな癖をつけました、わたし・・・ 国木田独歩 「二老人」
・・・老人は、切断された蜥蜴の尻尾のように穴の中ではねまわった。彼は大きい、汚れた手で土を無茶くちゃに引き掻いた。そして、穴の外へ盲目的に這い上ろうとした。「俺は死にたくない!」彼は全身でそう云った。 将校は血のついた軍刀をさげたまゝ、再び軍・・・ 黒島伝治 「穴」
・・・ 電線は切断されづめだった。 HとSとの連絡は始終断たれていた。 そこにパルチザンの巣窟があることは、それで、ほぼ想像がついた。 イイシへ守備中隊を出すのは、そこの連絡を十分にするがためであった。 吉永は、松木の寝台の上・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・ 足のさきから腰まで樋のような副木にからみつけられている、多分その片脚は切断しなければなるまい、それが福地だった。大腿の貫通銃創だ。「看護長殿、大西、なんぼ貰えます?」「踵を一寸やられた位で呉れるもんか。」「貰わにゃ引き合い・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・負傷をして、脚や手を切断され、或は死んで行く兵卒を眼のあたりに目撃しつゝ常に内地のことを思い、交代兵が来て、帰還し得る日が来るのを待っていた。 交代兵は来た。それは、丁度、彼等が去年派遣されてやって来たのと同じ時分だった。四年兵と、三年・・・ 黒島伝治 「雪のシベリア」
・・・きのう、きょう、二日あそんで、それがため、すでに、かの穴蔵の仕事の十指にあまる連絡の線を切断。組織は、ふたたび収拾し能わぬほどの大混乱、火事よりも雷よりも、くらべものにならぬほどの一種凄烈のごったがえし。それらの光景は、私にとって、手にのせ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・呼吸して生きていることに疲れて、窓から顔を出すと、隣りの宿の娘さんは、部屋のカアテンを颯っと癇癖らしく閉めて、私の視線を切断することさえあった。バスに乗って、ふりむくと、娘さんは隣りの宿の門口に首筋ちぢめて立っていたが、そのときはじめて私に・・・ 太宰治 「俗天使」
・・・によって撮影を進行させ、出たとこ勝負のショットをたくさんに集積した上で、その中から截断したカッティングをモンタージュにかけて立派なものを作ることも可能であろうが、経済的の考慮から、そういう気楽な方法はいつでもどこでも許されるはずのものではな・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・また大地震で家がつぶれ、道路が裂けて水道が噴出したり、切断した電線が盛んにショートしてスパークするという見ていて非常に危険な光景を映し出して、その中で電話工夫を活躍させている。それからまた犯人と目星をつけた女の居所を捜すのに電話番号簿を片端・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
出典:青空文庫