・・・『万葉』の作者が歌を作るは用語に制限あるにあらず、趣向に定規あるにあらず、あらゆる語を用いて趣向を詠みたるものすなわち『万葉』なり。曙覧が新言語を用い新趣味を詠じ毫も古格旧例に拘泥せざりしは、なかなかに『万葉』の精神を得たるものにして、『古・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・元来墓地には制限を置かねばならぬというのが我輩の持論だが、今日のように人口が繁殖して来る際に墓地の如き不生産的地所が殖えるというのは厄介極まる話だ。何も墓地を広くしないからッて死者に対する礼を欠くという訳はない。華族が一人死ぬると長屋の十軒・・・ 正岡子規 「墓」
・・・ 本誌の、この号には食糧問題、労働問題、法律上の諸問題、生活再建の市民的技術上の問題、再婚問題、産児制限の諸問題が、特輯として扱われている。 これらの題目のうちで、過去二十年間、日本の婦人雑誌が扱ったことのないというトピックが、只の・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
制限時間はすぎているのに、電車が来なくて有楽町の駅の群集は、刻々つまって来た。「もうそろそろ運動はじめたかい」 人に押されて、ゆるく体をまわすようにしながら、蔵原さんが訊いた。「これからだ」 江口さんは栃木・・・ 宮本百合子 「一刻」
・・・ 諸新聞には、三土内相その他政党首領たちの言葉として、制限連記制が不適当な方法であったことを強調された。婦人代議士のどっさり出たことも、この不適当な選挙方法の欠陥のあらわれのように語られた。市川房枝女史も、今の日本に三十九名もの婦人代議・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・大名、武家に対して町人の服装は制限されていたから、表は木綿で裏には見事な染羽二重をつける服飾も、粋という名で町人の風俗となった。武家の能狂言に対して、芝居が発達した。その大門をくぐれば、武士も町人も同等な男となって、太夫の選択にうけみでなけ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ トルストイの性慾論より「結婚以前には多種多様の方法に依って、神及人類の為に直接尽すことが出来ても、結婚は活動範囲を制限して、独り神及び人類の本来の召使である子供の教養を切に要求させるにとどまる。」 斯う云う結婚生活・・・ 宮本百合子 「黄銅時代の為」
・・・産児制限と国の工業化が解決の一助だろう」。重ねて鈴木文史朗は「大家族をもっている月給取りは子供の少い上役より月収が多い。これは一面子供多産の奨励のようなものだ」といっているのである。読売新聞の時評はいち早くこの卓見に同調して、労働者に家族手・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・ モラトリアムで学生の学費一五〇円と制限されたが、この食糧難、住宅難、まして交通費の膨脹で、学生は帳面一冊買いにくいこととなった。文化の最も大切な資材である紙は決してやすくなっていない。印刷費は却って上って来ている。憲法草案第二十一条に・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・ガスの制限もゆるやかになりました。そして冬は石炭も手に入るであろう。 ここに、わたしたちを堪えがたくする現実の矛盾がある。理性のある社会の生活であると思うことのできないあからさまな不合理が強いられている。 社会の新しい歴史は人民によ・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
出典:青空文庫