・・・真の近代芸術は、いつの日か一群の天才たちに依って必ず立派に創成せられる。それは未だ世界に全く無かったものだ。お手本から完全に解放せられて二十世紀の自然から堂々と湧出する芸術。それは必ず実現せられる。そうして自分は、その新しい芸術が、世界のど・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・モスコフスキーはこれを敷衍して「婦人は微分学を創成する事は出来なかったが、ライプニッツを創造した。純粋理性批判は産めないが、カントを産む事が出来る」と云っている。 話頭は転じて、いわゆる「天才教育」の問題にはいる。特別の天賦あるものを選・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ こういうふうに考えて来ると、ある一人が創成した新型式をその創成者自身が唯一絶対のものであるかのごとく固執しているのに対する、局外者の批判の態度のおのずから定まって来るであろうと思われる。 新型式中でも最も思い切った新型式としては、・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・一つにはこれらの画家が子規と特別な親交があって、そうしてこの病友を慰めてやりたいという友情が籠っていたであろうし、また一つには当時他に類のなかったオリジナルでフレッシな雑誌の体裁を創成するということに対する純粋な芸術的な興味も多分に加わって・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・おそらくこれらの所説も、全部がロイキッポスやデモクリトスなどが創成したものではなくて、もっともっと古い昔からおぼろげな形で伝わり進化したものに根を引いているのであろうと想像される。しかしこれら哲学者の植え付けた種子が長い中世の冬眠期の後に、・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
出典:青空文庫