・・・それは岩のような現実が突然に劈開してその劈開面をチラッと見せてくれるような瞬間だ。 そういうようなものを今の僕がどうして精密に描き出すことができよう。だから僕は今しばらくその海の由来を君に話すことにしよう。そこは僕達の家がほんのしばらく・・・ 梶井基次郎 「海 断片」
・・・ 以上ははなはだ未熟な分析の試みであったが、このような見方を一つの作業仮説として実際の古人の連句中の代表的なものに応用してみることは、連句の研究上に一つの新断面を劈開するだけの効果はありはしないかと思われる。ここで実例について詳説するこ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ またその桔梗いろの冷たい天盤には金剛石の劈開片や青宝玉の尖った粒やあるいはまるでけむりの草のたねほどの黄水晶のかけらまでごく精巧のピンセットできちんとひろわれきれいにちりばめられそれはめいめい勝手に呼吸し勝手にぷりぷりふるえました。・・・ 宮沢賢治 「インドラの網」
出典:青空文庫