・・・けれどもそこからボートまでのところにはまだまだ小さな子どもたちや親たちやなんか居て、とても押しのける勇気がなかったのです。それでもわたくしはどうしてもこの方たちをお助けするのが私の義務だと思いましたから前にいる子供らを押しのけようとしました・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・旗は、よろこびと幸福とへ向って生活の軌道を切りかえる親切と勇気にみちた信号合図の旗として、かざされ、振られなければならない。嬉々とした人生の建設のために構図し、労作する、その高き旗じるしとして、婦人の大集団の上に、勇敢に、はためかなければな・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・しかし戸を打ち破って踏み込むだけの勇気もなかった。手のものどもはただ風に木の葉のざわつくようにささやきかわしている。 このとき大声で叫ぶものがあった。「その逃げたというのは十二三の小わっぱじゃろう。それならわしが知っておる」 三郎は・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・努力のための勇気と快活とを奮い起こせばいいのです。現在の小ささを悟れば悟るほど努力の熱は高まって来ます。自分の運命を信じて、今に見ろ今に見ろと言いながら努力する事は、自分に対していいのみならず、自分の愛する人々を力づけ幸福にする意味で、他人・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫