・・・童話にあらわれていた味は、生活的な成長から諷刺に転じて、小熊さんの鋭い反応性と或る正義感と芸術的野望とは、諷刺詩を領野として活躍しはじめた。 技術的に諷刺的表現の或る自由さを身につけた頃、小熊さんや私の属していた文学の団体は解かれて、そ・・・ 宮本百合子 「旭川から」
・・・毎日の新聞記事をそっくりそのまま信じないまま、冷淡になってゆく心理の習慣、社会的な感情を生活の疲労とともに無反応、無批判にみちびいてゆく手段。これこそファシズムの社会心理学第一章です。軍部の「怪文書」が乱れとんで、出所も正体もわからないまま・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・その、それぞれに反応する生きた心を生きている。その波風の間で、では、何がわたしたちの日夜、まともに伸びたいとねがっている人間性の砦となり、その人の文学の足場となってゆくのだろう。 平凡だと思われるほどすりへることのない一つの真実がある。・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・「自分では自分で判断していると思っているのだけれど、しらずしらずに、あるいは単純な感覚反応を示している中に、一つの支配勢力によって動かされているメカニズムの中にひきこまれる可能性をもってくる」「意識の上では自分の独立判断でやっていると思うが・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・いろいろの事情を綜合し、文学者たちの気分を研究し、つまり、意味ある反応は期待しがたいという結論になった。この時期になると、こわいものに近よらず、自分たちを守るのが精一杯、という気風が瀰漫して、その人々のために、幅ひろい、なだらかな、そして底・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・々雑多の具象性に対し最も感受性が鋭く、個々の具象性の分析、綜合から客観的現実への総括を、あるいはその逆の作用をみずみずしく営み得るはずのプロレタリア作家ともあるものが、自分のしゃべる言葉に対する大衆的反応を刻々感得することなく、自身を「排斥・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・全身の筋肉が緊縮して、体は板のようになっていて、それが周囲のあらゆる微細な動揺に反応して、痙攣を起す。これは学術上の現症記事ではないから、一々の徴候は書かない。しかし卒業して間もない花房が、まだ頭にそっくり持っていた、内科各論の中の破傷風の・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・彼はその触れる物象に対して類まれなほど活発に反応する。そうしてその美を新鮮な味わいにおいてすくい取る。しかも彼は少数の物象にとどまることをしないで、彼を取り巻く無数の物象に、多情と思えるほどな愛情をふり撒く。『地下一尺集』の諸篇はこの多情な・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・先生の心臓は活発にそれに反応するが、しかし先生はそれだけを露骨に発表することを好まなかった。先生は親切を陰でする、そうして顔を合わせた時にその親切について言及せられることを欲しない。先生にとっては、最も重大なことはただ黙々の内に、瞳と瞳との・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
・・・ところでこのインド・ギリシア的な彫刻の様式が、初期のガンダーラ仏像のように、主として石彫として伝わってくるのと、この場合のように塑像として伝わってくるのとでは、これらの諸都市における反応はよほど違ったであろう。タクラマカンの砂漠のあたりには・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫