・・・――が、それより肝腎の本筋だがね、いよいよお敏さんが承知したとなりゃ、まあ、万々計画通り成功するだろうと思うから、安心して吉報を待ってい給え。」と、またさっきの話を続け出しましたが、新蔵はやはり泰さんの計画と云うのが気になるので、もう一遍昨・・・ 芥川竜之介 「妖婆」
・・・ 蝶子は呉服屋へ駆け込んで、柳吉と自分と二人分の紋附を大急ぎで拵えるように頼んだ。吉報を待っていたが、なかなか来なかった。柳吉は顔も見せなかった。二日経ち、紋附も出来上った。四日目の夕方呼出しの電話が掛った。話がついた、すぐ来いの電話だ・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・晴、苦痛全く去って、日の光まぶしく、野天風呂にひたって、谷底の四、五の民屋見おろし、このたび杉山平助氏、ただちに拙稿を御返送の労、素直にかれのこの正当の御配慮謝し、なお、私事、けさ未明、家人めずらしき吉報持参。山をのぼってやって来た。中外公・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ 十一月二十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より〕 今日は久し振りで吉報をもたらします。昨日午後一時五十分男の子が生れ、九百五十匁でまことに見事な坊主だそうです。七時半頃起こされてみたら、もう洗面所で支度していて出たのが・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 御注進です! 吉報を齎したお賞めの言葉を先ず下さい。使者二 悦び、悦び! 悦びヴィンダー ミーダ云え! 何事だ?使者一大地の神が眼を覚まそうとしています。 今朝人間界に舞い下りて、彼方此方ぶらついていると、大地の神の衣の・・・ 宮本百合子 「対話」
出典:青空文庫