・・・岡崎賢七とか云う人と同室へ入れられ、宅へ端書したゝむ。時計を見ればまだ三時なり。しかし六時の急行に乗る積りなれば落付いて眠る間もなかるべしと漱石師などへ用もなき端書したゝむ。ラムネを取りにやりたれど夜中にて無し、氷も梨も同様なりとの事なり。・・・ 寺田寅彦 「東上記」
・・・ これらの点より見れば、夫婦同室は決して面白きものにあらず。独身なれば、親戚朋友の附合もただ一方にして余計の心配なく、衣食住の物とて自分一人の気に任せて不自由なく、病気も一身の病気にして他人の病を憂うるに及ばざるに、ただ夫婦の約束したる・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・その布を見た同室の人が、あら、いいわねえ、みんなで早速人形つくりをはじめましょう、といったとき、「みんなですって、この布は私達のものよ。皆で作りたかったら、自分で行って布を貰ってくればいいでしょう。この布はあげられませんよ」女主人公はそうい・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
出典:青空文庫