・・・そういうものとして、よりよい友情の花を同性の間にも異性の間にも期待するのは自然の心と思う。社会生活そのものの成長のあらわれとして、友情の可能が見られるものである以上、この願望には個人のひそかな願い以上のものがあると思う。同時に、個人のひそか・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ 現在では女性の――生活の様式がどうしても単調で変化に乏しいと云う点、自分が女性としての性的生活を完全に営んでいなかった事又は、女性の一人として同性の裡に入っていると、自分達の特性に対して馴れ切って無自覚に成りがちであると一緒に、却って・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・白手袋をはめたエリザベスの両手は、ショックにたえている表情でかたく握りあわされ、おのずと倒れている同性に視線の注がれている彼女の顔じゅうには、そのような事態を遺憾とするまじめさがたたえられている。しかし、閲兵する王女としての足どりは乱れず、・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・ 私一箇人としては、今迄の通り同性のそう云う運動に、好意と感謝を含めた沈黙の視線を向けながら、自分の選んだ道に専念しつづけるばかりです。〔一九二三年十一月〕 宮本百合子 「参政取のけは当然」
・・・ 可成種々あるような気も致します、が、先ず同性と云う点から、こちらの婦人に就いて私の思ったままを述べさせて戴きましょう。 厨川白村氏によって「女王」の尊称をたてまつられ、又この名にふさわしい権力を以て生きて居るこちらの婦人は、私の眼・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・自分というものが身にもっている容色と才智との全部を男と平等なあるいは男を瞠若たらしめる女として表現してゆこうとする意欲に熱烈で、その面には徹底的であったらしいけれども、当時のおくれた無智におかれている同性に対しては決して暖い同情者啓蒙者であ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ どんなにその女を女が愛しても やはり同性の相殺、心理的にあり、男ばかりの中で育った男と同じ欠点女ばかりの生活にはあり、〔欄外に〕度量 幻想の欠乏。安定専一のところ。┌そうでないかと思うと┤ 三宅やす――つや子と・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・一時、私は同性間の友情に、随分悲観的な見方をしたことがあった。女学校時分に相当親しかった友達などでも、だんだん時が経ち、生活の様子が異って来ると、どうもぴったり心が喰い合わない。正直なことをいうと感情を害し、自己の生活などを全然客観し得ない・・・ 宮本百合子 「大切な芽」
・・・而も、その友情が異性間に於ける場合には、自ら、同性間より微妙な節度と云うものがあります。決して、現在、日本で若い男女間の所謂交際と云うもののように、妙に陰翳があり、感情的で、危いものではありません。 通り一遍の知人である男子と、第三者を・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・よその経営に働く婦人たちは自分たちの境遇のつまりのところは、日本の製糸工場で同性たちが受けている待遇とつながったものであるという現実に対して、実に無智であった。自分たちの居場処や服装が糸取りをして働いている同性たちと違っているということだけ・・・ 宮本百合子 「働く婦人の歌声」
出典:青空文庫