・・・今度も偶然な吻合で、ちょうど妻が子供を連れて出かけるところであったが、三毛の様子がどうも変であったから少し外出を見合わして看護させた。納戸のすみの薄暗い所へいつかの行李を置いてその中に寝かせ、そしてそろそろ腹をなでてやるとはげしく咽喉を鳴ら・・・ 寺田寅彦 「子猫」
・・・ このような種類の機微な吻合がしばしば繰り返されて、そしてその事が誇大視された結果としていわゆる厄年の説が生れたと見るべき理由が無いでもない。 ある柳の下にいつでも泥鰌が居るとは限らないが、ある柳の下に泥鰌の居りやすいような環境や条・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
先頃の『弘道』に掲載された「日本人の理想に吻合しない西洋人の家庭生活」と云う記事を読み、種々な感想の湧上るのを覚えました。 全篇の結論として、目下問題とされている家族制度、家庭生活改善の理想を徒に外国の風習などに摸倣せ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・六郎が父殺しし人の、一瀬なりしことは、初知るものなかりしが、故らに迹を滅さんと、きりこみし人々、皆其刀を礪がせし中に、一瀬が刀の刃二個処いちじるしくこぼれたるが、臼井が短刀のはのこぼれに吻合したるより露われにき。六郎が父の首は人々持ちかえり・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫