・・・また日々の細かい屈辱に心を咬まれるとき、ゴーリキイは、自分の不愉快な負担をじっと考えさえすれば、骨を折らないでも哀訴の言葉が詩の形で流れ出した。ゴーリキイが晩年に及んでも忘れなかったこの時代の「自分の祈祷文」の中に一つこういう詩があった。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・に対する悪意のある哀訴をした。それをきくと、「教育のある人達に対する片輪の伝説」で毒されているゴーリキイのパン焼仲間は不可解なものへの嘲笑と敵対心を刺戟され毒々しい喜びで目を閃かせながら叫ぶのであった。「ウー。教育のある連中は俺達よりわ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 病苦は号泣や哀訴によってごまかすことはできても、全然逃避し得る性質のものでない。しかし精神的な生の悩みは、露出させる事によってごまかし得るほかに、また全然逃避することもできるのである。 ある内的必然によって意志を緊張させた場合を想・・・ 和辻哲郎 「ベエトォフェンの面」
出典:青空文庫