・・・十七世紀の新陸地発見時代のイスパニアの貨幣にはジブラルタルの図案が鋳出されている下に Plus ultraと刻まれていたと、この著者は語っている。この本は、今日の歴史のものに対する、私たちの健全な愛着と奮闘心とを呼びさます熱量をはらんでいる・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・これまで日本の切手の図案と云えばあきもせず乃木大将・東郷大将一点ばりで、すこし変化したと思えば、その頃の四銭には格別美しさもない議事堂の絵がついていた。ところが、その一銭切手の模様は、農夫の働いている姿であった。菅笠をかぶり尻きりの働き着を・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
・・・どこにもない様に顔の小さい、足の長い美人たちが、それが商売である図案家によって、奇想天外に考え出されたモードのおしゃれをして、たったり坐ったり寝そべったりしています。お互いに愛想のつきるような電車に乗ってつとめへ往復して、粉ばかり食べて下腹・・・ 宮本百合子 「若人の要求」
出典:青空文庫