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・・・「明後日の夜は芝居見に連れゆくべし。外題は阿波十郎兵衛なる由ききぬ。そなたに見せなば親恋しと思う心かならず起こらん、そのときわれを父と思え、そなたの父はわれなり」 かくて源叔父は昔見し芝居の筋を語りいで、巡礼謡をかすかなる声にてうた・・・
国木田独歩
「源おじ」
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・・・「まあ、貴方、郡山さ芝居が掛りましたぞえ、東京の名優、尾上菊五郎ちゅうふれ込みでない。外題は、塩原多助、尾上岩藤に、小栗判官、照手の姫、どんなによかろう。見たいない。 祖母の顔を見るやいなや、婆さんは、飛び立った様にその小さ・・・
宮本百合子
「農村」