・・・ 一八九七年、マリヤは長女のイレーヌを生み、彼女の家庭生活と科学者としての生活は一層複雑に多忙になったけれども、健康なマリヤは、すべての卓抜な女性が希うとおりそれらの生活の全面を愛して生きようとしました。「妻としての愛情も、母としての役・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・ 斯うして、考えるので、私の先は非常に多忙な訳になる。 此頃は、幸健康も確らしくなって来て居るから又とない心丈夫な事である。 語学の必要をつくづく感じて居る。 しなければならない事に追われる様で、頭が散漫になりはしまいかと怖・・・ 宮本百合子 「偶感」
・・・ところが、かりに、その人が労働者であり、組合員であり、また他の組織に属しているという条件から、その多忙な活動について、むずかしく考えることなんかいらないんだ、云われることさえどんどんやればいいんだ、という風に習慣づけられるとしたら、そのひと・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・洋装の九人の婦人たちもそれぞれ元気そうにかたまって歩いていて、多忙にくみ立てられたニューヨークでの見学プランがしのばれた。 ニューヨークといえば、われわれのクラブの委員長であった松岡洋子さんはこのごろ水飢饉のニューヨークでどんな毎日を送・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・合法党として存在しはじめてわずか一年を経たばかりの日本の党が、よしんばまだ十分豊饒な文化性を溢れさせていないとして、また組織人の大部分が文芸作品の真剣な読者である暇がないほど活動に多忙であるからといって、日本の民主的革命とその文学の発展のた・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・祖母は、父の多忙のため、幾日も顔を見ないことに馴れていた。旅行については何もきかず、蜜柑の汁、すっぽんのスープ、牛乳、鶏卵などを僅に飲みながら、朝になり夜になる日の光を障子越しに眺めている。口を利くのは、まだ起きてはいけないかという質問と、・・・ 宮本百合子 「祖母のために」
・・・―― けれども、一週間の他の三日、火、水、土の昼間は、R夫人も却々多忙で家事の多くを弁じなければなりません。 先ず火曜日は、先週の日曜の朝代えた下着や、敷布や襯衣その他の洗濯日、午後からは訪問と云う日割です。大きいものは一まとめに袋・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 第二日 多忙な永山氏を煩すことだから、大奮発で七時起床。短時間の滞在だから永山氏に大体観るべきところの教示を受けたいと、昨日電話して置いたのだ。紹介状には、私共二人の名が連ねてある。ところが、Y、昨晩床に入る・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・けれども、私がたんのうする迄いるには、案内役に立たれた永山氏が多忙すぎる。数日の中にジャに出発されるところなのだ。福済寺、大浦、浦上天主堂への紹介を得、宿に帰った。 独りで待たされていたY、退屈しぬき、私の顔を見るといきなり云うことには・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ 点とりは、生憎非常に多忙なので、ゆっくりあれで遊んで居られません。勝手ですがあのまま御返し申します。二つの大きな消しは御迷惑でも必ず御削除下さい。 とりあえず御返事申上ます。中條百合子 富澤有為男様 侍史・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
出典:青空文庫