・・・「豪儀じゃ、豪儀じゃ、そちは左程になけれども、そちの身に添う慾心が実に大力じゃ。大力じゃのう。ほめ遣わす。ほめ遣わす。さらばしかと預けたぞよ」 さむらいは銀扇をパッと開いて感服しましたが、六平は余りの重さに返事も何も出来ませんでした・・・ 宮沢賢治 「とっこべとら子」
・・・「爾の時に疾翔大力、爾迦夷に告げて曰く、諦に聴け、諦に聴け、善くこれを思念せよ、我今汝に、梟鵄諸の悪禽、離苦解脱の道を述べん、と。 爾迦夷、則ち、両翼を開張し、虔しく頸を垂れて、座を離れ、低く飛揚して、疾翔大力を讃嘆すること三匝にし・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・ 清助は、大力な、髭むじゃな、字の読めない正直な金持の百姓であった。彼は仙二の立場をよく理解した。 三 村役場と村役場、村役場と姪の一家族。交渉はなかなか手間どった。永年住んでいたものだから、毎月敷生村・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・江口渙、壺井繁治、今野大力などアナーキストであった作家詩人が、次第に共産主義に接近しつつあった。無産派文学団体の改組が頻繁に行われた。第一次大戦後のドイツではこの一九二三年にあのインフレーション、マークの下落が起った。その情勢が、ドイツ・フ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・見ると、今野大力が洋服のまま、体を左右にふるような歩きつきで出て来、こっちへ向って色の悪い顔で頬笑み、それから流しの前へ股をひらいて立って、ウガイを始めた。風邪で喉が腫れ、熱が高いのである。 頃合いを見て自分はゴザから立ち上った。そして・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・[自注6]詩人――プロレタリア詩人、今野大力。『戦旗』とプロレタリア文化連盟関係の出版物編輯発行のために献身的な努力をした。共産党員。一九三二年の文化団体に対する弾圧当時、駒込署に検挙され、拷問のビンタのために中耳炎を起し危篤に・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 皿洗いゴーリキイにとっての上役、太って大力な料理人スムールイが、年にあわせては背の伸びた、泣ごとを云ったことのないゴーリキイの天性に何か感じるものがあり、彼に目をかけた。午後の二時頃、暫く手がすくと、彼は号令をかけた。「ペシコフ、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・それは四月まで『働く婦人』編輯事務員として全力をつくし活動した同志今野大力が現在白テロに倒れ、危篤の有様で慶応病院に入院していることです。五月号『働く婦人』編輯後記に短かく報道されていますが、中耳炎になった彼が警察から入院させられた済生会病・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・ゴーリキイにとっての上役、料理番のスムールイという大力男が行李の中に何冊かの本をもっていた。彼はゴーリキイに目をかけて、繰返し、繰返し云った。「本を読みな。わからなかったら七度読みな、七度でわからなかったら十二遍読むんだ!」 そして・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・今野大力、今村恒夫、本庄陸男、黒島伝治など。とくに今野大力と今村恒夫は、一九三〇年から三三年にかけてのプロレタリア文学運動のなかで、ふかく日常的にもつながりあった仲間であった。譲原さんは、この人々との関係からみれば、たった二度だけ会った友達・・・ 宮本百合子 「譲原昌子さんについて」
出典:青空文庫