・・・正月は一年中で日の最も短い寒の中の事で、両国から船に乗り新大橋で上り、六間堀の横町へ来かかる頃には、立迷う夕靄に水辺の町はわけても日の暮れやすく、道端の小家には灯がつき、路地の中からは干物の匂が湧き出で、木橋をわたる人の下駄の音が、場末の町・・・ 永井荷風 「雪の日」
・・・「千住。大橋のあっち側」「遠いんだねえ。歩いて来るの?」「いいえ、電車にのって来る」 たまに、「ちょっとまあ腰でもかけといき、くたびれちゃうわね、まだちっちゃいんだもの」 などと云われることもなくはなかった。そんなと・・・ 宮本百合子 「一太と母」
・・・ 「秋空」 三津木静 「春龍胆」 若宮ふみ子 「何日かは春に」 大橋重男「秋空」は、まとまっているけれども、後半で女主人公が、自分からはなれたはじめの愛人吉村の心にもどってゆく、その心の過程が、感情の推・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・どうせ六甲へ行ったらホテルまで登ってしまえばきっと涼しい、大橋房子の涙痕今猶新なり、だろうけれど。――然しこれをもやーさん読むときは、すべて、かったなわけね。過去です。加茂で読むんですものね。 昨夜、汽車の中どう? 涼しかって? ポンポ・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・その山岸敬明が経営しているのが深川新大橋にある互幸輪タク会社です。この輪タクは「宮様輪タク」とよばれています。それはどうしてでしょう。山岸敬明が輪タクを開業するとき十万円ほどの資本を出して株主となったのがもとの賀陽宮、いまの賀陽恒憲だったそ・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
出典:青空文庫