・・・九 青い大麦や、小麦や、裸麦が、村一面にすく/\とのびていた。帰来した燕は、その麦の上を、青葉に腹をすらんばかりに低く飛び交うた。 測量をする技師の一と組は、巻尺と、赤と白のペンキを交互に塗ったボンデンや、測量機等を携え・・・ 黒島伝治 「浮動する地価」
・・・馬は、「もうこれでいいから、しまいに大麦を一俵私に下さい。そしてこの手綱をゆるめておいて、すぐに船へお乗りなさい。」と言いました。 ウイリイは馬のいうとおりにして、船へ乗りました。そして今にも岸をはなれようとしていますと、馬は、ふい・・・ 鈴木三重吉 「黄金鳥」
・・・そのうちに、何だか、じぶんのもっている、大麦でこしらえたパンとバタを、その女の人にやりたくなって、そっと、岸へ下りていきました。 女は間もなく、髪をすいてしまって、すらすらとこちらへ歩いて来ました。ギンはだまってパンとバタをさし出しまし・・・ 鈴木三重吉 「湖水の女」
・・・即ち世界中の小麦と大麦米や燕麦蕪菁や甘藍あらゆる食品の産額を発見して先ず第一にその中から各々家畜の喰べる分をさし引きます。その際あんまりびっくりなさいませんように。次にその残りの各々から蛋白質脂肪含水炭素の可消化量を計算してそれから各の発す・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫