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・・・を忘れて夢中になった例は余り多くなかったので、さしもの翁も我を折って作者を見縊って冷遇した前非を悔い、早速詫び手紙を書こうと思うと、山出しの芋掘書生を扱う了簡でドコの誰とも訊いて置かなかったので住居も姓氏も解らなかった。いよいよ済まぬ事をし・・・
内田魯庵
「露伴の出世咄」
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・・・そこで菊亭殿が姓氏録を検めて、はじめて豊臣秀吉となった。 これも植通は宜かった。信長秀吉の鼻の頭をちょっと弾いたところ、お公卿様にもこういう人の一人ぐらいあった方が慥に好かった。秀吉が藤原氏にならなかったのも勿論好かった。このところ両天・・・
幸田露伴
「魔法修行者」