・・・一、入社の後、学業上達して教授の員に加わるときは、その職分の高下に応じ、塾中の積金をもって多少に衣食の料を給すべし。生徒より受教の費を出さしむるは、これらのためなり。一、洋書の価は近来まことに下直なり。かつ初学には書類の入用も少なく・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・時勢の方向に変化なければ、身の方向を定むるもまた、はなはだ易し。学業を勤むるにも、これを勤めてその行く先は、所得の芸能を人事のいずれの辺に活用して如何なる生計を営むべしと、おおよそその胸算を立つることも難からず。かつ今日は、世禄の家なくして・・・ 福沢諭吉 「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」
・・・ 一カ月ばかり前のことでしたが、上野高女の生徒が、学校当局と意見の衝突をしたことがありました。学業もすてて耕作した作物を、先生が独占したことに対する不満が原因であったと記憶します。新聞の記事だけでは、双方の事実が十分に明らかにされてはい・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・そして突然、自分の生活の道を変更させられ、何年間か一貫した目的を以ていそしんでいた学業や仕事を放擲させられ、一つの鍋の中に打ち込まれた豆のように煮つめられた。そういう避けることの出来ない事情におかれた若い人々にとって最も致命的であった点は、・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 私は、良人の学業を信頼し、科学性の常識化を翹望するよき数人の夫人達が、科学の科学性を十分発揮し得る社会とは、どのような社会であるかということについて、優しい心で真面目に一考されることを切望するのである。〔一九三五年五月〕・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・が、平和が調印され、学生と云うので早く兵籍から放たれた二十歳のハフは、ロンドンに帰ると学業などはそっちのけで素姓もわからない喫茶店の給仕女と結婚し、悪い仲間に誘われて、曖昧至極な会社を作り、家へなどはよりつきもしません。 遂にそのことか・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・地方の農村の国民学校が、すべて学業よりも草刈り、繩作りと軍需供出にせめたてられていた最中に、先生としてすべての労作に耐えて来ました。 良人が亡くなられてから、上京して暫く国民学校につとめ、近頃は大町さんの最も愛する仕事、日本の働くすべて・・・ 宮本百合子 「婦人の皆さん」
・・・職業の不安とともに結婚の可能をも失った多くの若い女性、経済不安定のために学業をつづけられないすべての女学生たちこそ平和の要求者である。そしてわたしたちは苦痛によっていくらか賢くされた女性として、次のことを理解したいと思う。戦争は人間の起すも・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・佐野も東京には出て見たが、神経衰弱の為めに、学業の成績は面白くなく、それに親戚から長く学費を給してくれる見込みもないから、お蝶が切に願うに任せて、自分は甘んじて犠牲になる。」書いてある事は、ざっとこんな筋であったそうだ。 川桝へ行く客に・・・ 森鴎外 「心中」
出典:青空文庫