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・・・翁はご承知のとおり画事の上では、大癡を宗としていた人です。ですから大癡の画という画はいやしくも人間にある限り、看尽したと言ってもかまいません。が、その秋山図という画ばかりは、ついに見たことがないのです。「いや、見るどころか、名を聞いたこ・・・
芥川竜之介
「秋山図」
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・・・新しく、とらわれずに真理を求めようとする年少の求道者日蓮にとってはそのいずれをとって宗とすべきか途方に暮れざるを得なかった。のみならず、かくまちまちな所説が各々真理を主張することが真理そのものの所在への懐疑に導くことはいつの時代でも同じこと・・・
倉田百三
「学生と先哲」