・・・大変な害毒だ。しかも身分がよかったり、金があったりするものに、よくこう云う性根の悪い奴があるものだ」「しかも、そんなのに限って皮がいよいよ厚いんだろう」「体裁だけはすこぶる美事なものさ。しかし内心はあの下女よりよっぽどすれているんだ・・・ 夏目漱石 「二百十日」
・・・既に温良恭謙柔和忍辱の教に瞑眩すれば、一切万事控目になりて人生活動の機を失い、言う可きを言わず、為す可きを為さず、聴く可きを聴かず、知る可きを知らずして、遂に男子の為めに侮辱せられ玩弄せらるゝの害毒に陥ることなきを期す可らず。故に此一章の文・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ 半封建の野蛮がもたらしたコムプレックスの害毒は、こういう良心的であるゆえの萎縮をもたらしたばかりではない。事情が変化して、人間らしい自由を建設しようとする本性が伸張されなければならないいまになっても、しいられてできた内部抵抗の癖は、そ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・日本という一つの島国がアジアに向って太平洋のはじにつらなっているという自然の現象は、日本が人類平和に対して害毒の島とされなければならない宿命を語ることではないのである。 日本の人民そのもののうちに平和を守ろうとしている誠意を信じることが・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・は、働きそのものの発展性がないこと、独立的生計が営めないこと、めいめいが特殊の技術をもっていないことなどにからんで、ブルジョア婦人雑誌の封建的な現代では、エロティックな結婚病に対するまんせい的な刺戟の害毒があります。 こんにち、大多数の・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
出典:青空文庫