・・・短い間に八つ裂にされてしまったまでの日本の左翼運動とその思想が、今日かえりみて、多くの人々に未熟であり、機械的であり、模倣であり、主観的であったと批判される根本の原因は、一方に日本が、どんなに封建的な専制支配の下におかれていたかという事実を・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・軍事的専制と営利出版との共同圧力で、真の文化は潰された。 その営利出版は、今なお残って、今度は、モラトリアムその他破局的動揺と結合して、新しい文学者の出発を阻んでいる。 いつの時代にでも、文学を愛し、それを生もうとする者は、金銭ずく・・・ 宮本百合子 「作家への新風」
・・・ 専制と恐怖の政治をすすめる温和な手段の一つは、人民の精神から批判力をぬき去るという方法である。笑いやスペクタクルによって精神の集中を溶け去らせる愚民化の方法である。ワグナーがオペラをプロシア皇帝の治世の具として自薦したとき、はっきりそ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・搾取者はその専制に対してプロレタリアートが階級的団結の下に立上る、うかうかしちゃいられないんだ。 ――そうだとも。男だって女だってプロレタリアートなら、ボヤボヤ炬燵にもぐって正月してるものはないさ。 ――一九三一年は一つ俺たちの暦で・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ 哲学者、教育者としてのルソーの考え方は、フランスのルイ十四世から十六世ごろまでの猛烈な専制主義に対して、人間の平等と自由独立、女も男もひとしい人間性の上に立つ自由を主張した。近代民主主義の先駆者であったルソーのほかに、ヴォルテールやデ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・そして、日本を輿論のない軍力専制の鎖につないで、遂に歴史的な破局に導いた。尾崎秀実氏とその国際的な同志たちとは、日本の軍事権力が最後ののたうちで最も悪逆になり狂暴となったその時期の犠牲であったのである。 非道な力は終焉に瀕している、それ・・・ 宮本百合子 「人民のために捧げられた生涯」
・・・ 過去ロシアは非常に専制主義だった。それだから中学校に入るのにも、階級の低いものの子はは入れなかった。だから中学へ入るのでも、養子に行って入るとかしなければいけなかった。普通は貴族か地主、軍人、技術家、大きな実業家の息子に限られていたが・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・即ち、世界の正直な人民は、戦争挑発をしりぞけ、自分の国のなかにおける専制的な権力とたたかってゆくために、量りしれないプラスを得たことを意味します。再び、一九五〇年という年への期待と歓喜を! 一九四九年九月二十一日から十日間、北京で開・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・十月革命によってプロレタリア農民が勝利するまで、ブルジョア地主の専制支配の下でユダヤ民族と弱小民族の一つであるタタール民族が虐げられて来たことは、ロシア歴史を一目見ただけで明らかである。ユダヤ人は屡々虐殺された。タタール人抑圧の悲憤にみちた・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・その姿がそっくりそのままギリシア伝説におけるジュピターの専制権力として反映した。かりに優秀な人間的力量にめぐまれたある奴隷が、奴隷として許された限界を突破して――主人の繁栄と利益のためにだけ献身するという目的を破って、自身の解放のためにその・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
出典:青空文庫