・・・ 彼の応仁の大乱は人も知る通り細川勝元と山名宗全とが天下を半分ずつに分けて取って争ったから起ったのだが、その勝元の子が即ち政元だ。家柄ではあり、親父の余威はあり、二度も京都管領になったその政元が魔法修行者だった。政元は生れない前から魔法・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・正平の十九年に此処の道祐というものの手によって論語が刊出され、其他文選等の書が出されたことは、既に民戸の繁栄して文化の豊かな地となっていたことを語っている。山名氏清が泉州守護職となり、泉府と称して此処に拠った後、応永の頃には大内義弘が幕府か・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
・・・「山名先生じゃ、ありませんか?」 呼びかけた一羽の烏は、無帽蓬髪の、ジャンパー姿で、痩せて背の高い青年である。「そうですが、……」 呼びかけられた烏は中年の、太った紳士である。青年にかわまず、有楽町のほうに向ってどんどん歩き・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・ この統計の基礎的の材料として第一に必要なものは火山名の表である。しかしこの表を完全に作るということがかなりな難事業である。まずたくさんの山の中から火山を拾い出し、それを活火山と消火山に分類し、あるいは形態的にコニーデ、トロイデ、アスピ・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・この花ばかりではない。第一には若葉のひろがりにしてもそうだ。この山名物のつつじにしてもそうだ。北方の春は短かく一時に夏景色になるわけなのに、この高原では、すべて徐々に、すべて反覆しつつ、追々夏になって来る。東京で桜が散った後は、もう一雨で初・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
出典:青空文庫