・・・しかもそこまでを、出来るだけ迷路にひっぱって、模造の山河をしつらえて、引きまわされるのを承知して引きまわされてゆく面白さである。 科学的構造が精密であればあるほど謂わば嘘の過程に複雑さがあって、面白いのだろう。或る意味での知的デカダンス・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ みずから山河巨大な中国に生れ合わした人民の一人として、中国の民衆生活を衷心から愛し、おかれている苦渋の生活を哀惜し、その未来の運命の発展に対して限りない関心をもっている。そのこころが溢れている。ロシア文学史の十八世紀末から十九世紀の間・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・清少納言の婦人及び芸術家としての生活に対して、著者は穏かな表現のうちに実感をこめて「私どもも人生の幾山河をこえ、清少納言がこの枕草子を書いた年齢よりずっと多くの年を重ね、理智や批判の眼も少しはあけられて来ました」とこの王朝女流作家の輝やかし・・・ 宮本百合子 「若い世代のための日本古典研究」
出典:青空文庫