・・・ これは明治天皇崩御の時の思い出である。私は明治四十二年の夏の生れであるから、この時は、かぞえどしの四歳であった筈である。 またその「思い出」という小説の中には、こんなのもある。「もし戦争が起ったなら。という題を与えられて、地震・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・天皇が崩御になった九州のある地方の名がすなわちこの村の名になっている。どういうわけでこの南海の片すみの土地がこの天皇と結びつけられるようになったのか私は知らない。たしかな事はおそらくだれにもわかるまい。それにもかかわらずこういう口碑は人の心・・・ 寺田寅彦 「田園雑感」
・・・それは明治天皇崩御の年の秋であった。 ○ 談話がゆくりなく目に見る花よりも口にする団子の方に転じた。東京の都人が食後に果物を食うことを覚え初めたのも、銀座の繁華と時を同じくしている。これは洋食の料理から、おのず・・・ 永井荷風 「葛飾土産」
出典:青空文庫