・・・天文をうかがって吉兆を卜し、星宿の変をみて禍福を憂喜し、竜といい、麒麟といい、鳳鳥、河図、幽鬼、神霊の説は、現に今日も、かの上等社会中に行われて、これを疑う者、はなはだ稀なるが如し。いずれも皆、真理原則の敵にして、この勁敵のあらん限りは、改・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
あるがままの姿は決して心理でもなければ諷刺でもない 伊藤整氏の近著『街と村』という小説集は、おなじ街や村と云っても、作者にとってはただの街や村の姿ではなく、それぞれに幽鬼の街、幽鬼の村である。これまでの自身の中・・・ 宮本百合子 「観念性と抒情性」
八月七日の本紙に、伊藤整氏が同氏の作「幽鬼の町」に就て書いた私の月評に反駁した文章を発表された。編輯者は、私からそれに答える文を求めている。生活及文学に対する私の態度を盲目的な偏執又は非芸術的な機械性と云われている点や錯覚・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・ この二つの論文及び批評家伊藤整氏によって書かれた小説「幽鬼の町」を読んで、今日文壇で批評家として通っている諸氏の精神的性格に、芸術家として第一歩的な自己省察の健康な弾力が喪失していることを痛感したのは、恐らく私一人ではなかろうと思う。・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫