・・・まことに、どうも、度し難いものです。 私たちの計画は、とにかくこの汽車で終点の小牛田まで行き、東北本線では青森市のずっと手前で下車を命ぜられるという噂も聞いているし、また本線の混雑はよほどのものだろうと思われ、とても親子四人がその中へ割・・・ 太宰治 「たずねびと」
・・・――度し難い奴だ」「お前も何だな」 やがて彼は白い天井から文句を読み上るように云った。「出かけるがいい。息子の処へ行ってゆっくり休んで来たらよかろう。――……春迄」「はい?」「――年寄で冬はひどかろうから春迄休んで来たら・・・ 宮本百合子 「或る日」
・・・の健三とその妻との内的いきさつに進むと、漱石の態度は女は度し難いと男の知的優越に立って揶揄しているどころではなくなって来ている。「行人」の一郎が妻の心の本体をわがものとして知りたいと焦慮する苦しみは、見栄も外聞も失った恐ろしい感情の真摯さで・・・ 宮本百合子 「漱石の「行人」について」
出典:青空文庫