・・・この身にはもはや要なき品なれば君がもとに届けぬ、君いかようにもなしたまえと書き添えて貴嬢の写真一枚はさみあり、こは貴嬢がこの正月五日御地より送りたまいし物の由。さてわれにも要なき品なれば貴嬢に送り返すべきなれど思う節あればしばしわが手もとに・・・ 国木田独歩 「おとずれ」
・・・「先日、お母上様のお言いつけにより、お正月用の餅と塩引、一包、キウリ一樽お送り申し上げましたところ、御手紙に依れば、キウリ不着の趣き御手数ながら御地停車場を御調べ申し御返事願上候、以上は奥様へ御申伝え下されたく、以下、二三言、私、明けて・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・「先日、お母上様のお言いつけにより、お正月用の餅と塩引、一包、キウリ一樽お送り申しあげましたところ、御手紙に依れば、キウリ不着の趣き御手数ながら御地停車場を御調べ申し御返事願上候、以上は奥様へ御申伝え下されたく、以下、二三言、私、明けて・・・ 太宰治 「虚構の春」
出典:青空文庫