・・・ため、復古時代から七月革命を経て、複雑きわまりなく推移しつつあったパリの生活へ飛びこんだのであった。 当時、フランスは、将に「中産階級が歴史の舞台へ決定的にのり出して来た」一大時代であった。工業が発達し、商業が自由になり「ナポレオンによ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・という王政復古時代の現実をなまなましく反映したバルザックの人物たちは、その旺盛な爪牙をといでつかみかかる対象を常に必要としたし、その関係が、バルザック流の情熱で純粋を保つためには――純粋にぺてんにかけ、純粋にぺてんにかかるためには――この世・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・今日のブルジョア文学が段々貧弱になって行くのもそれで、谷崎潤一郎、佐藤春夫などの大家連が滔々として復古主義に赴くのも、没落せんとする者の逃避に他なりません。 そして、一方新しい文学の光は新興プロレタリアートの陣営に輝きそめています。・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・ 三 そのほかにも、ブルジョア作家のファッショ化の一形式として、一見、自由主義的な、或は復古趣味的な作品を書くことになって、ハッキリとファッショへの途を辿っている一群の人々がある。例えば牧野信一の「ゼーロン・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
・・・ 文学の面ばかりにこういう復古的傾向が見られるのではなくて、音楽の方でも、例えばこの間ピアニストのケムプが来た時、最後の演奏会の日に即興曲を弾いて貰うこととなり、聴衆からテーマを求めた。そのとき出された日本音楽からのという条件つきのテー・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・直木三十五、吉川英治らが明治維新を「王政復古の名によって描き出し、帝国主義段階の今日において大衆のファッショ化を積極的に強化しようとはかっている。」この現実の闘争におけるモメントこそわれわれプロレタリア作家に正しい歴史小説を書くべき任務を負・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
出典:青空文庫