・・・この願さえ叶えば少女は復活しないでも宜しい。復活して僕の面前で僕を売っても宜しい。少女が僕の面前で赤い舌を出して冷笑しても宜しい。「朝に道を聞かば夕に死すとも可なりというのと僕の願とは大に意義を異にしているけれど、その心持は同じです。僕・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・ある時代には人性のある点は却って閑却され、それがさらに後にいたって、復活してくることは珍しくない。そしてその復活は元のままのくりかえしではなく必ず新しく止揚されて、現段階に再登場しているのだ。その二千五百年間の人間の倫理思想の発展と推移とを・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・「三つの死」のみず/\しい、詩に、引きつけられた。「アンナ・カレニナ」「復活」などよりも、「戦争と平和」が好きだ。戦争を書いた最もいゝものは、「セバストポール」だ。「セバストポール」に書かれた戦争は、「戦争と平和」にかゝれた戦争よりも、真実・・・ 黒島伝治 「愛読した本と作家から」
・・・一九三一年満洲事変以後、軍事的傾向と気分が復活すると、「不如帰」が改作されて映画となって、再び出現したのもまた理由のないことではない。「不如帰」については、立入る必要はあるまい。第四章 日露戦争に関連して ─花袋・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・ 高瀬の胸に眠っていた少年時代の記憶はそれからそれと復活って来た。彼は幾年となく思出したことも無い生れ故郷の空で遠い山のかなたに狐火の燃えるのを望んだことを思出した。気味の悪い夜鷹が夕方にはよく頭の上を飛び廻ったことを思出した。彼は初め・・・ 島崎藤村 「岩石の間」
・・・あの人の復活も信じない。なんであの人が、イスラエルの王なものか。馬鹿な弟子どもは、あの人を神の御子だと信じていて、そうして神の国の福音とかいうものを、あの人から伝え聞いては、浅間しくも、欣喜雀躍している。今にがっかりするのが、私にはわかって・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・いちど死んで、キリスト様のように復活でもしない事には、なおりません。自分から死ぬという事は、一ばんの罪悪のような気も致しますから、私は、あなたと、おわかれして私の正しいと思う生きかたで、しばらく生きて努めてみたいと思います。私には、あなたが・・・ 太宰治 「きりぎりす」
・・・キリストの復活を最後まで信じなかったトマスみたいなところがある。いけないことだ。「我はその手に釘の痕を見、わが指を釘の痕にさし入れ、わが手をその脅に差入るるにあらずば信ぜじ」などという剛情は、まったく、手がつけられない。私にも、人のよい、た・・・ 太宰治 「散華」
・・・そうしたら、きっと復活する。希望、奮闘、勉励、必ずそこに生命を発見する。この濁った血が新しくなれると思う。けれどこの男は実際それによって、新しい勇気を恢復することができるかどうかはもちろん疑問だ。 外濠の電車が来たのでかれは乗った。敏捷・・・ 田山花袋 「少女病」
・・・シーメンスが提出した白金抵抗寒暖計はいったん放棄されて、二十年後にカレンダー、グリフィスの手によって復活した。このような類例を探せばまだいくらでもあるだろう。新しい芸術的革命運動の影には却って古い芸術の復活が随伴するように、新しい科学が昔の・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
出典:青空文庫