・・・行きづまった、けれどもその理由は、申し上げません等と、なんという思わせ振りな懦弱な言いかたをするのだろう。ひどい圧迫を受けているのだが、けれども忍んで、それは申し上げませんと殊勝な事を言っているようにも聞えますが、誰が一体、君をそんなに圧迫・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・「思わせ振りしやがらあ、釘づけなんぞにしやがって」 彼は石の上へ箱を打っ付けた。が、壊われなかったので、此の世の中でも踏みつぶす気になって、自棄に踏みつけた。 彼が拾った小箱の中からは、ボロに包んだ紙切れが出た。それにはこう書い・・・ 葉山嘉樹 「セメント樽の中の手紙」
・・・ 影っ坊師って何だか妙に思わせ振りなもんですねえ。「女中の? 私はねよくそう思いますよ、 女中ってものは私達と同じ女でありながらまるで特別なものとして神から授かった頭を持ってるってね、面白い研究ですよ、その心理をしらべるのは・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
出典:青空文庫