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・・・々が皆感激の高調に上って、解脱又解脱、狂気のごとく自己を擲ったごとく、我々の世界もいつか王者その冠を投出し、富豪その金庫を投出し、戦士その剣を投出し、智愚強弱一切の差別を忘れて、青天白日の下に抱擁握手抃舞する刹那は来ぬであろうか。あるいは夢・・・
徳冨蘆花
「謀叛論(草稿)」
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・・・その歌のこの盾の面に触るるとき、汝の児孫盾を抱いて抃舞するものあらんと。……」汝の児孫とはわが事ではないかとウィリアムは疑う。表に足音がして室の戸の前に留った様である。「巨人は薊の中に斃れて、薊の中に残れるはこの盾なり」と読み終ってウィリア・・・
夏目漱石
「幻影の盾」