・・・その頃の彼の悪戯の傑作は、Milton の sonnets をそのまま自作のような顔をして田舎新聞に投書したことである。勿論新聞は夢にも知らずにそれを掲載した。 十五歳の頃から写真を始めてかなり身を入れてやった。その外の娯楽は乗馬、クリ・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・この間私が或る地方へ行ったらある新聞でそういう問題を出して小学生徒から答案の投書を募っていました。その中で自分の叔父さんが一番偉いという答を寄こしたのがあると聞いてはなはだ面白く感じました。自分の親父が天下一の人物だなどは至極好い了見で結構・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・『ホトトギス』所載の挿画 年の暮の事で今年も例のように忙しいので、まだ十三、四日の日子を余して居るにもかかわらず、新聞へ投書になった新年の俳句を病牀で整理して居る。読む、点をつける、それぞれの題の下に分けて書く、草稿へ棒を引・・・ 正岡子規 「ランプの影」
・・・ 今日の新聞では西尾末広の偽証罪が不問に附せられるかもしれないことについて、弁護士である人からの投書があった。有名なえらい人の偽証は無罪とされ、一般の人の偽証は犯罪とされているその点への疑惑が語られていた。裁判が精神的・物質的圧力から必・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
・・・ 新聞記事の出た前後、検事局の態度にあきたりない投書が、どっさりあった。この一事件は、猶予という形で落着したのであったが、考慮ある人々は、この一事件が暗示しているところが、どんなに深刻であるか、今日なおしばしば思いめぐらしているであろう・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ さてこの投書は、前のとは少しちがってきて、一方では私の作品の真実が多数の人の心に生きる事実を認めはじめた。だがその一方で依然として「内容が一つ一つ逃げてゆく話」などという前の投書の言葉を、どうして素直にうけいれないのかと、河上氏は詰問・・・ 宮本百合子 「河上氏に答える」
・・・こちらの方は『ニュース・ウィーク』の投書欄にのっている。テキサスのトム・エフ・マンデンという人が七月十八日の『ニュース・ウィーク』にのったこの閲兵式の写真について、手紙をよこしているのだった。トム・マンデン氏は、そのエリザベス王女の写真が口・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・工場内には、はじめ、極く日常の出来事に関する感想を壁新聞に投書しているうち、ふと文学研究会へ出席するようになり、今では正規の労働通信員であると同時に、短篇小説や小評論をも書き出しているような若い男女が沢山ある。 婦人部の機関紙『労働婦人・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 四月号の時評だの、投書だののあっちこっちに赤線が引っぱってある。四月の時評は「戦争と私達の生計」を中心として、去年秋満州掠奪戦争がはじまってからの「死傷者の数」「軍費」その他中華ソヴェト、ソヴェト同盟の第二次五ヵ年計画の紹介などが書か・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・十八九の青年が投書しているのだが、自分は何とかして東京に出たい。村の生活は年寄たちが古風で理解がないばかりか、青年たちの生活もその内幕に入って見ると恐しいほど程度が低い。酒を飲むことと、夜遊びが唯一のたのしみで、本さえ手に入れることはできな・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
出典:青空文庫