・・・ 常に労働者と鼻突きあわして住み、また農産物高の半面、増税と嵩ばる生活費に、農産物からの増収を吐き出して足りない百姓の生活を目撃している者には、腑甲斐ない話だとそれは嘆ぜられるのだ。攻勢の華やかな時代にプロレタリア文学があって、敗北の闇・・・ 黒島伝治 「田舎から東京を見る」
・・・ 僕には此時始めて攻勢を取ろうという考が出た。併し既に晩かった。 座敷の客は過半庭に降りて来て、別々に彼と僕とを取り巻いた。彼を取り巻いた一群は、植込の間を庭の入口の方へなだれて行く。 四五人の群が僕を宥めて縁から上がらせた。左・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・ ロスの方は体躯も動作も曲線的弾性的であるのに対してマックの方は直線的機械的なように見え、また攻勢防勢の駈引も前者の方がより多く複雑なように見えたので、自分は前に見たベーアとカルネラとの試合と比較して、ロスが最後の勝利を占めるのではない・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・トナカイが死地に陥って敢然たる攻勢を取り近寄る犬どもを踏みつぶそうとする光景は獣類とはいえ悲壮である。いかなる名優の活劇でも、これに比べてはおそらく茶番のようなものである。それからの後の場面で荒涼たる大雪原を渡ってくるトナカイの大群の実写は・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・カルネラはこれに対して不断に攻勢を取って、単調な攻撃をほぼ一様なテンポで繰り返しているように思われた。なんとなく少しあせりぎみで、早く片を付けようとして結末を急いでいるらしく自分には思われた。ちょっと見たところでは、ベーアのほうは負けかかっ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ すこし慣れて来ると三毛のほうが攻勢をとって襲撃を始めた。いきなり飛びついて首を羽がいじめにして頭でも足でもかみつきあと足で引っかくのである。ほんとうに鷹と小すずめとのような争いであった。ちびは閉口して逃げ出すかと思うとなかなかそうでな・・・ 寺田寅彦 「ねずみと猫」
・・・ 右からは二千五百万人の失業者を含む勤労階級の攻勢に押され、左に彼等の敵として聳えるソヴェト同盟に圧され各国のブルジョア支配者たちは、死物狂いになって来た。 中国をケシかけ、ポーランドを操るだけでは我慢出来なくなった列国は、一九三〇・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・もしわれわれが本当に人間として基本的なものだけは守り通すという決意をもち、それが実践のためには牢獄と死をさえ辞せないだけの強い意志だけあれば、必ず我々はこのようなお調子にのった今日の右翼攻勢を粉砕しうる時はくる。」しかし、「戦術的には従来の・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 一昨年の十月から昨年の二月まで、労働攻勢が強くて二月にその頂点をきわめました。この期間日本中にストライキの波が高まり、賃金は上りました。ところが二月のゼネストの計画が流れたあと、何故組合内にいわゆる物とり主義に対する批判ということが始・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・現代反動政府とそれを支配しているブルジョアとは、あらゆる機会に坊さん、いわゆる道徳家牧師を動員して世界経済恐慌によって起るプロレタリアの攻勢を何とかして胡麻化そうと、かかっているのです。反宗教運動は、プロレタリア文化運動の一翼として、当然起・・・ 宮本百合子 「反宗教運動とは?」
出典:青空文庫