・・・ 大伯父が純宗教家でそう華々しい生活もして居なかったけれ共旧家だもんで今東京で相当に暮して居る。 千世子の家とはかなり親しいんで千世子なんかもちょくちょく行った。 大伯母さんと千世子なんかは呼んで居た。三十八九の時、信二をもった・・・ 宮本百合子 「千世子(二)」
・・・附てからの不幸つづきで、こんな淋しい村に、頼りない生活をして居るのだと云う事をきいて居るので、その荒びた声にも日にやけた頸筋のあたりにも、どことなし、昔の面影が残って居る様で、若し幸運ばかり続いて昔の旧家がそのまま越後でしっかりして居たら、・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・アメリカの所謂名門旧家の人々が、いつしか社会の推移につれて教会の神のほかの神々である金力のほか有名人という気まぐれな神にも支配され奉仕するようになって来ていること、しかもそこにアメリカ的実務性にしたがって有名人製造というビジネスの存在する有・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・あれを建てた緒方某は千住の旧家で、徳川将軍が鷹狩の時、千住で小休みをする度毎に、緒方の家が御用を承わることに極まっていた。花房の父があの家をがらくたと一しょに買い取った時、天井裏から長さ三尺ばかりの細長い箱が出た。蓋に御鋪物と書いてある。御・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
出典:青空文庫