・・・で一寸したヒステリーに関する科学的トリックを利用しつつ、ウィーンにおける親日支那青年李金成暗殺の物語を語るなかで、「支那人を捕える方法を知っていますか。それは在住支那人の数名のものを買収なさい。日本人を捕える時には、それは不可能ですが、支那・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・現に新聞は共産党への弾圧を挑発するためマ元帥暗殺計画を企てた新井輝成という男の記事を発表している。 当時の中央委員たちによって、スパイとして調べられていた小畑達夫が特異体質のため突然死去したことは、警視庁に全く好都合のデマゴギーの種とな・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・黒船が来て、井伊直弼が暗殺されて、開港した後進国の日本が、ヨーロッパ資本主義列強に伍してアジアで唯一の一等国になったということは、どんなに複雑な明日の日本の立場を暗示するものか、ということは一般の感情には感じられなかった。 明治以来の日・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ 一八八一年、ゴーリキイが十三の時、アレキサンダア二世が暗殺された。 人生の矛盾がますますつよくゴーリキイの心を不安にした。彼の周囲に充満しているのは無智やあてのない悔恨や徒食、泥酔、あくまで互にきずつけ合う残酷などであるのに、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・彼は進歩性の故に暗殺されなければならなかった。なぜならば、当時の日本の支配権力は憲法発布と同時に、はっきりと反動的な政権として国家を統一する方向に向ったからである。 憲法発布以前、封建の重荷を脱して新しい日本の社会を作ろうとする気運が純・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・だから原敬を暗殺した中岡良一が死刑に処せられないときまったとき、父は驚喜して当時の裁判長を名判官とたたえた。かくのごとく父は、私利をはかって超個人的道義的任務を忘れたものをすべて腐敗せるものとして憎悪する。自己の身命を超個人的道義的任務に捧・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫