最初の創作集は「晩年」でした。昭和十一年に、砂子屋書房から出ました。初版は、五百部ぐらいだったでしょうか。はっきり覚えていません。その次が「虚構の彷徨」で新潮社。それから、版画荘文庫の「二十世紀旗手」これは絶版になったよう・・・ 太宰治 「私の著作集」
・・・偶然、安芸書房の広中氏と故宮原晃一郎氏の夫人とが知りあいの間柄で、「古き小画」の切りぬきは、宮原夫人を通じて手に入った。そして、ここにおさめられることになった。「古き小画」で作者は、古代の近東の封建的な武人生活の悲劇を描こうとしている。・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 日頃カメラを愛する人々にとっては、今更ヴォルフも知れすぎた物語であろうけれど、番町書房というところから発行されているこの一冊の作品集は、いろいろな感銘で私をうごかした。 ヴォルフのカメラはまるで美感と温さとをもった生きもののようで・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・ これも、強制読書生活の間でのことであるが、私は、第一書房から出ている『藤村文学読本』というのを送られて読んだ。なにか、芭蕉の句を引いて、芭蕉の芸術境に対する自己の傾倒をのべた一文があった。引用されている句の中には「あか/\と日は難面も・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・という小説は三一書房という本屋から出たいろいろな人十七人の『われらの成果』という小説集の中に集録されました。その小説集には島木健作「癩」、平田小六という「囚われた大地」という長篇小説をかいた元隆章閣の人などもはいっているし、婦人作家では私の・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 第一書房から竹内てるよさんの『静かなる愛』という詩集が出ている。 幼いときから苦しい境遇に育って、永い闘病生活のうちに詩をつくって来た女詩人であり、統一された境地を今の心にうちたてている詩人である。 同じ題で六月の『新女苑』に・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・慶応書房版ヴァルガの「第二次世界大戦の性格」は、立体的にリアルに今日の動きの諸条件と方向とを説明している。 この頃はヒトラーの「我が闘争」が一種の流行本となって、英雄崇拝的文化の感情を満足させているらしいけれども、あらゆる時代、何事かを・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
最近、一つの示唆に富んだ経験をした。この頃は、いろいろなところで新しい雑誌の発行や本の出版計画がある。或る書房が、文化・文学雑誌の創刊をすることとなって、原稿をたのまれた。時間がなくて、すぐその希望には応じかねた。けれども・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・ 三笠書房で出版されている唯物論全書の仕事も、今日の我々の周囲をとりかこむ社会の色調との対照に於て、深く評価されなければならず、同時に社会の底潮の頼もしさをも感じさせる。 新島繁氏がこの全書の一冊として著わされた「社会運動思想史」は・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・それから角の本やによって、第一書房のをとって、来月の『アララギ』を一冊とらせる注文をして、玉川電車にのりました。暑く、汗が出る、出る。水瓜の汗故、サラサラ流れる。家へついたのは十時半すぎでした。 風呂へ入って、お文ちゃん先へ床につき、自・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
出典:青空文庫