・・・今年の新卒業生が有害な制度の犠牲になるのを防ぐために、と職業安定法、労働基準法などの箇条を説明していられます。どのような職業につく人にもあてはまる――つまりことしから就職なさるみなさまのなかのある人々にもあてはまることとして。―― この・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・それとも、この知識は有害なのであろうかと。が、私は人間は新しい発見から悪よりも、むしろ、善を引き出すと考える者の一人であります。」 マリアは愛するピエールの最後のこの言葉を実現しなければならないと思ったろう。科学の力が一方で最大限にその・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・その共感にひかされて、三好十郎の毒舌も、しまいはブツブツ、現在の肉体派や中間小説が、現代文学の新しい局面を展くためには、無益であるばかりか有害でさえあるという事実を批判しきれなかった。 その討論の時期に、伊藤整も東京新聞の文芸欄で発言し・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・若い勤労婦人は最も危険・有害なあらゆる生産部門においてさえ活動しました。 しかも、日本の軍事的権力によって特別な保護をうけていた企業家たちは、生産の大半を婦人の労力によって行いながら、勤労婦人の福祉施設、母性保護設備、災害予防施設は行わ・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・石油が湧き出すぐらいであるから、地盤がわるく、有害瓦斯の洩れるような場所が沢山ある。当時の石油会社は、そういう土地の上へ労働者長屋を建て、家賃は給料から天引きにして住まわせた。木造の長屋が古くなって、地中から洩れる瓦斯が建物の内部へ充満する・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・世界観の問題とか創作方法の問題とか、今日いろいろ意見がいわれているが、今日の読者として土台その問題の本質が十分わからないまま、あれこれ論議をきいて、判断を迷わされることは、民主主義文学の発展にとって有害です。ブルジョア文学と民主的な文学の本・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・は婦人にとって責任ある事件です。「堕胎」は有害だし、立派な医者の手でされてもいつもうまく行くとはきまっていない。 心配せずに働く婦人が母親となれるように、託児所を 監督に、要求しろ!〔一九三二年二月〕・・・ 宮本百合子 「ソヴェト映画物語」
・・・「文学者や思想家が、既存の社会通念に無批判に服従することでのみ仕事をすべきだとする考えは、人類に進歩があるべきであるならば、有害な考えである。既存の社会通念を批評し訂正するという思想家や芸術家の働きが、現在の文化を形成して来たのである」と。・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・文学的な才能という、ありふれた、そして、有害な言葉が、そこへのって来る。特に、婦人は、才能がある、ない、ということにかかわって、消極的にさせられて来た。各人の人生と生活の経験を文学であらしめるものは、文学的才能などという、浅薄な偶然な資質ば・・・ 宮本百合子 「婦人の生活と文学」
・・・彼らにとって偶像は破壊せられなくてはならぬ。しかし偶像そのものは依然としてその象徴的生命を失わない。彼らにとって有害なるものも、その真の効用を解する他のものにとっては有益で有り得る。偶像再興が生活にとって意義あるはそのためである。二・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫