豊島は僕より一年前に仏文を出た先輩だから、親しく話しをするようになったのは、寧ろ最近の事である。僕が始めて豊島与志雄と云う名を知ったのは、一高の校友会雑誌に、「褪紅色の珠」と云う小品が出た時だろう。それがどう云う訳か、僕の・・・ 芥川竜之介 「豊島与志雄氏の事」
・・・ ツイ近ごろのことです、私は校友会の席で、久しぶりで鷹見や上田に会いました。もっともこの二人は、それぞれ東京で職を持って相応に身を立てていますから、年に二度三度会いますが、私とは方面が違うので、あまり親しく往来はしないのです。けれども、・・・ 国木田独歩 「あの時分」
・・・前には人前に出るとじきにはにかんだりしたのが、校友会で下手な独唱を平気でするようになった。なんだか自分の性情にまで、著しい変化の起った事は、自分でもよくわかったし、友達などもそう云っていた。しかし、それはただ表面に現われた性行の変りに過ぎぬ・・・ 寺田寅彦 「枯菊の影」
・・・「ほんとに……あの、藤村さんの御宅で校友会のあったあの時お目にかかったきりでしたねえ。」 電車がやっと動き始めた。「よし子さん、おかけ遊ばせよ、かかりますよ。」と下なる丸髷は、かなりに窮屈らしく詰まっている腰掛をグット左の方へ押・・・ 永井荷風 「深川の唄」
・・・女学校へ入って間もなくあった校友会に出たきり、私は、文字通り御無沙汰を続けている。我々の年代にあっては、生活の全感情がいつも刻々に移り換る現在に集注されるのが自然らしい。日々の生活にあっては、今日と云い、今と云う、一画にぱっと照りつけた強い・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・此間だも――と村校友達となぐり合を始めて相手に鼻血を出させたが、元はと云えばブランコの順番からで夜まで家へ帰されなかったと話して聞かせた。「御免なして下さりませ、ほんに物の分らん児だちゅうたら。「かまいやしないよ、子供の・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・吾人は社会に罪悪の絶えぬ以上校友の思想に欠点あるを怪しまぬ。ただ願わくばこの悪潮流が光栄ある四綱領を汚さざらん事を望むのである。 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫