・・・それ故に、機械主義的な構成に、また強権主義的な指導に、真の創造はあり得ないであろう。 人間は、意識的に、形態を定めることはできる。しかし、詩を作り、幸福を産むことはできない。強権下には、永遠に、人生の平和はあり得ないごとく。たゞ、純情に・・・ 小川未明 「常に自然は語る」
・・・ 芸術に、階級意識のあると否とを構成上の条件とするか、せざるかは、むしろ、作者がいかなる生活意識を有するかによって決定されることです。 知識階級が、単独な階級として、持続されないことは、今や、明かなことゝされています。大多数が支配階・・・ 小川未明 「街を行くまゝに感ず」
・・・戯曲というものを考えていた私は、戯曲は純粋になればなるほど形式が単純になり、簡素になり、お能はその極致だという結論に達していたが、しかし、純粋小説とは純粋になればなるほど形式が不純になり、複雑になり、構成は何重にも織り重って遠近法は無視され・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・と題する小説とはまたべつの物語を構成するであろう。 織田作之助 「夜光虫」
・・・るとあの茶店の別ピンさんが口にしたと思いますが、鎌倉から東京へ帰り、間もなく帰郷して例の関係事業に努力を傾注したのでしたが、慣れぬ商法の失敗がちで、つい情にひかされやすい私の性格から、ついにある犯罪を構成するような結果に立到り、表記の未決監・・・ 葛西善蔵 「父の出郷」
・・・ この闇の風景は単純な力強い構成を持っている。左手には溪の向こうを夜空を劃って爬虫の背のような尾根が蜿蜒と匍っている。黒ぐろとした杉林がパノラマのように廻って私の行手を深い闇で包んでしまっている。その前景のなかへ、右手からも杉山が傾きか・・・ 梶井基次郎 「闇の絵巻」
・・・近代の知性は冷やかに死後の再会というようなことを否定するであろうが、この世界をこのアクチュアルな世界すなわち娑婆世界のみに限るのは絶対の根拠はなく、それがどのような仕組みに構成されているかということは恐らく人知の意表に出るようなことがありは・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・されど、実体の両面たる物質と勢力とが構成し、仮現する千差万別・無量無限の形体にいたっては、常住なものはけっしてない。彼らすでに始めがある。かならず終りがなければならぬ。形成されたものは、かならず破壊されねばならぬ。成長する者は、かならず衰亡・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・ 其実体には固より終始もなく生滅もなき筈である、左れど実体の両面たる物質と勢力とが構成し仮現する千差万別・無量無限の個々の形体に至っては、常住なものは決してない、彼等既に始めが有る、必ず終りが無ければならぬ、形成されし者、必ず破壊されね・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・ 而してかの陰陽思想は延いてわが國に及び、神代史の構成に影響すること大なりき。〔明治四十五年二月二十二日、漢學研究會の講演、明治四十五年四月『東亞研究』第二卷第四號〕 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
出典:青空文庫