・・・然し黒田氏のかゝる気持は次代の長官以下には全く忘れられてしまった。惜しいことだったと私は思う。 私は北海道についてはもっと具体的なことが書きたい。然し今は病人をひかえていてそれが出来ない、雑誌社の督促に打ちまけて単にこれだけを記して責を・・・ 有島武郎 「北海道に就いての印象」
・・・ しかし、このことも、幾千万児童の精神文化の問題であり、次代の新社会建設を約束するものなるが故に、解放の暁が迫っています。ひとり搾取の対象となった彼等の上に、近時、社会の眼が、ようやく正しく向いて来たのでした。・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・夢見る、理想主義の青年のみが健やかなる青年であり、次代を荷い、つくる青年なのである。 まして学窓にあるほどの青年が環境をつぶやいたりなどできるものであろうか? これに対してはクロポトキンの『青年への訴え』を読めと勧めるだけでつきている。・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ 日本の文化的指導者は祖国への冷淡と、民族共同体への隠されたる反感とによって、次代の青年たちを、生かしも、殺しもせぬ生煮えの状態にいぶしつつあるのである。これは悲しむべき光景である。是非ともこれは文化的真理と、人類的公所を失わぬ、新しい・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・今のように表面的にはそういう新たな歴史の建設的推進力が見にくくされているような時期には、窮乏化する小市民インテリゲンツィアが、確信をもって新たな次代の階級へ自身を移行させることが困難であると同様に、恋愛や結婚の実際に当っても、本質的な発展は・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・だが私は、最も人間性の発展、独自性、時代性、そこに生じるさまざまの軋轢、抗争の価値を理解する筈の芸術家の生活の中でも、親子の関係は人間的先輩が次代の担いてである若い人間を観るという風に行っていない場合が多く、よきにせよ、あしきにせよ、家長風・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・その次代の交代者たるコムソモール、労農通信員たちの日常生活はどうであろうか? 彼等はめいめいの職場にあって、すっかり生産と結ばれて育って来ている。質のよい熟練工、技術家、専門家としてきっちりソヴェト生産の中軸的活動者となっている。或る産業に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・その下から、自然発生的に、やがては次第に意識的に、次代のジェネレーションに生きついでゆこうとする要素と、同じ環境から生い立って、その善意のすべてにかかわらず様々の道をとおって壊滅を辿らなければならない者と、それらも大なり小なりの典型として描・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ ところで最近の『文学新聞』は、党とともにソヴェトのプロレタリア作家たちが、次代の交代者である子供たちへの本気な関心について報告している。五ヵ年計画は、文化的事業の第一として、学齢児童全国就学を実施しようとしている。ソヴェト全同盟内の子・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・どんな破滅が激しかろうと、虐げようが厳しかろうと、男女一組の真直な人間がその三方の何処かに逃る隙さえあれば、きっと私の手が待ち受けてい、つつましく根気よく次代の栄をもり立てるのです。 ――おや、微な気勢が近づいて来る。私になじみのある・・・ 宮本百合子 「対話」
出典:青空文庫