・・・ 山伏の言につれ、件の毒茸が、二の松を押す時である。 幕の裙から、ひょろりと出たものがある。切禿で、白い袖を着た、色白の、丸顔の、あれは、いくつぐらいだろう、這うのだから二つ三つと思う弱々しい女の子で、かさかさと衣ものの膝ずれがする・・・ 泉鏡花 「木の子説法」
・・・ラプンツェルは魔の森に生れ、蛙の焼串や毒茸などを食べて成長し、老婆の盲目的な愛撫の中でわがまま一ぱいに育てられ、森の烏や鹿を相手に遊んで来た、謂わば野育ちの子でありますから、その趣味に於いても、また感覚に於いても、やはり本能的な野蛮なものが・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・特にこれらの茸と毒茸との区別は顕著に感ぜられた。赤茸のような鮮やかな赤色でもかつて美しさを印象したことはない。それは気味の悪い、嫌悪を催す色であった。スドウシやヌノビキなどは毒茸ではなかったが、何ら人を引きつけるところはなかった。 子供・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
出典:青空文庫