・・・注ぎ込んだエネルギーの一部は必ず無駄になって消費される。電燈の場合などでも肝心の光になるエネルギーは消費される電力の割合にわずかな小部分で、あとはみんな不必要な熱となって宇宙に放散する。この、物質界に行われる原理を、鉛を食う虫の場合の生理的・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
・・・ただ相違のある点は国民何千万人が総計延べ時間何億時間を消費し、そうして政府に何千万円の郵税を献納するか、しないかである。」 こんな好い加減の目の子勘定を並べてありふれの年賀状全廃説を称えていたが、本当はそういう国家社会の問題はどうでもよ・・・ 寺田寅彦 「年賀状」
・・・事実の大局から云えば活力を吾好むところに消費するというこの工夫精神は二六時中休みっこなく働いて、休みっこなく発展しています。元々社会があればこそ義務的の行動を余儀なくされる人間も放り出しておけばどこまでも自我本位に立脚するのは当然だから自分・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・ 一冬で、巨大な穴、数万キロの発電所の掘鑿をやるのには、ダイナマイトも坑夫も多量に「消費」されねばならなかった。 午後六時の上り発破の時であった。 昼過ぎから猛烈な吹雪が襲って来たので、捲上の人夫や、捨場の人夫や、バラス取り、砂・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・去年の牛乳協定は農民の消費を考慮せずにされた。つまり各農戸の人員を数えず、バラビンスキー地方一帯、牛一匹一年六・六ツェントネル平均として協定標準が定っていた。各農家別にすると、一頭持 四・六二頭持 六・〇三頭持 ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・自主的に米を供出している村の人たちで営団にその米を渡さず、何とか直接消費者にわたす方法はないかと頭を砕いているところもあった。これらの人々は自分たちの労力と親切との結果が中途で妙なことになるのを見抜いていやがっているのである。 農林大臣・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・本質はそういうものなのに、考えた言葉に翻訳してあんな風に云うことは、そこに個性もないし、実感もないし、空虚な消費的な気分で映画をみる或る種の若い女の話術の一典型が在るばかりだと思われる。話術の巧さは近代女性の魅力の一つとして云われているが、・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・ 都会の消費者は、目前の食糧難に気がたって、つい農村を羨み、怨むような気分になる。しかも、双方にそんな思いをさせる政府こそ本当の対手なのである。 発表された憲法草案は、日本の運命にとっていろいろ真面目な問題を持っている。第十二条に、・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・人間が、驚歎すべき生命の消費に耐え狂乱的に見えるまでに、その理性を試しつつ進展させて来た社会の歴史の一こま一こまに、独特な価値、その美しさがないということはありえない。わたしたちの精神が自身面している歴史の波瀾のうちに美と詩と慰藉とを見いだ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 明るい、電化された大工場を中心に共同食堂がある。消費組合売店ではラシャの布地まで扱っている。托児所、学校、革命の家、病院は建築中だ。案内の若い、労働通信員をしている技師と工場内の花の咲いたひろい通路を歩いていたら、こっちでは電熱炉で鉄・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫