・・・谷間の泉から湧き出る水は、その周囲に凍てついて、氷の岩が出来ていた。それが、丁度、地下から突き出て来るように、一昨日よりは昨日、昨日よりは今日の方がより高くもれ上って来た。彼は、やはり西伯利亜だと思った。氷が次第に地上にもれ上って来ることな・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・ 六 鉱山監督局の技師には、危険な箇所や、支柱や柵をやってないところや、水が湧き出る部分は見せないようにつくろっているのだ。切れた捲綱を継ぎ合して七カ月も厚かましく使っていた。坑夫はケージに乗って昇降するたびに、ヒ・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・まことの愛はその時初めて湧き出るだろう。一〇 私は彼を愛し、尊敬し、恐れ、憐れみ、そして侮蔑する。 私は愛する者、尊敬する者、恐れる者、憐れむ者、侮蔑する者を持っている。また愛し尊敬する者、愛し憐れむ者、憐れみ侮蔑する者・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫