・・・は芸術的な演出、特色あるギリシャ式舞台でヨーロッパ各国に知られている。芸術部員は、研究室をもって、舞台装置、衣裳、照明。専門にわかれ、それぞれ最近の様式をとり入れて、劇芸術としての完成を努めている。 一方、教育部は、いま日本女のとなりに・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・トラムの演じた集団化のアジプロ劇は政治的な問題を極く見易い農村の日常的事件の中に盛り込んで潤いのある情熱的な演出だった。難かしいことを云えば技術的に未だ未熟だし、田舎臭いところもありはするがトラムにはそう云う欠点を片端から克服して行くだけの・・・ 宮本百合子 「ソヴェト「劇場労働青年」」
・・・の全然新しい演出。失敗に終った「知慧の悲しみ」の同じような試み。ただ物ずきでメイエルホリドはそれ等をやったのではなかった。十九世紀の「検察官」の記念碑的内容を、ソヴェトの音で、ソヴェトの形で、社会主義建設にたずさわるソヴェト・プロレタリアー・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・技術の上で非常に進歩的に、真面目に芸術的な効果の強い演出をやっている。 その舞台の恰好は特別な恰好で、古代ギリシャの舞台、お能の舞台のようで、三方があいて、それが観客席に突出ている。それだから観客の中から舞台に非常に密接だし、必要なとき・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・演劇の世界が封建的なしきたりからぬけ切っていないことは土方与志さんのような世界を歩いて来た演出家でさえ、日本の今日の芝居の社会で口をきくときは東宝さん、何々さん、と昔風な仁義の口調をつかっておられるのを見てもわかる。文学の分野はすこし前進し・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・滝沢氏は批評の貧困を熱心に語っておられ、現在では批評家よりも演技者、演出家が語っている言葉の方が生き生きしていると、ある時期のプロレタリア作家の間に生じた批評に対する意見に類似した意見を語っていられる。興味あることは、その滝沢氏にしろ、その・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
・・・彼は画を描き戯曲を書き、新たな劇運動にとって欠くべからざる演出者の一人である。この二三年来は小説も書かれる。興味あることは、村山氏がゴーリキイの「どん底」を昨年新たな認識で上演し好評を博したことはわれわれの記憶に新しい。その同じ一人の芸術家・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
帝劇で復活を観た。一九三〇年にモスクワ芸術座で上演された方法で演出された。 つよく印象にのこったこと。 カチューシャに扮した山口淑子は熱演している。各場面ごとに、その場面の範囲内で。このことは、女優としての山口淑子・・・ 宮本百合子 「復活」
・・・それは私の訳が卑俚なのとある近代劇協会々員の演出が膚浅なのとで、ファウストが荘重でなくなったと云うのである。もしそうだとするなら、それは演出者が私に誤られたものとして、私は演出者に謝しても好い。しかしこの方面の批評をした人の中には、「世間が・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・忠臣孝子義士節婦の笑う可く泣く可く驚く可く歎ず可き物語が、朗々たる音吐を以て演出せられて、処女のように純潔無垢な将軍の空想を刺戟して、将軍に睡壺を撃砕する底の感激を起さしめたのである。畑はこの時から浪花節の愛好者となり浪花節語りの保護者とな・・・ 森鴎外 「余興」
出典:青空文庫