・・・また日本人の独創的な科学的研究でも、西洋人が一度きわめをつけないと、学位さえもらえないことがあるのとも一般である。 モンタージュはすなわちモンテーであり、マウンティングであり、日本語では取り付け、取り合わせ、付け合わせ、あしらいである。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・それでたとえば昔、広重や歌麿が日本の風土と人間を描写したような独創的な見地から日本人とその生活にふさわしい映画の新天地を開拓し創造するような映画製作者の生まれるまでにはいったいまだどのくらいの歳月を待たなければならないか、今のところ全く未知・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・ われらの祖先にも、少なくも芸術の上では、恐ろしく頭のいい独創的天才がいた。光琳歌麿写楽のごとき、また芭蕉西鶴蕪村のごときがそれである。彼らを昭和年代の今日に地下より呼び返してそれぞれ無声映画ならびに発声映画の脚色監督の任に当たらしめた・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ 実際、たとえばすぐれた物理学者が、ある与えられた研究題目に対して独創的な実験的方法を画策して一歩一歩その探究の歩を進めて行った道筋の忠実な記録を読んで行くときの同学読者の心持ちは、自分で行きたくて、しかも一人では行きにくい所へ手を取っ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・しかもそれらの人々が独創的であり見識家であるほど、その差別の程度も甚だしいのである。 ただ、一番始末のいい場合は、学問の本山であるところの西洋の第一流の大家達の統括の下に開拓され発達させられた一つの明確な区劃内に限られた部門の中で、かの・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・といったようなことをしたり顔に云って他人の真面目なそうして実際はかなり有望な独創的研究をあたまからけなしつけるようないわゆる大家も決して珍しくはない。「それは君、昔フランスでやったものだよ」と云って若い技師の進言を言下に退ける局長もまた珍し・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ ある哲学者が多年の間にたくさんの文献を渉猟して収集し蓄積した素材の団塊から自身の独創的体系を構成する場合があるであろう。科学者でも同様な場合があるであろう。そういう場合に寄り集まった材料が互いに別々な畑から寄せ集められたものである以上・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・に対する理解がそこにあるとされているが、そういう国では現在青年群に与える読みものとしてそういう古典を整頓しているほか、その青年たちが成人したときその世代の文化的創造力を溌溂旺盛ならしめるために、どんな独創の可能を培いつつあるのだろうか。・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・思いつきのいい或る女の人、感覚のいい人が独創性を発揮してそういう絣や縞を作り出した。それだのに、こういう独創性や能力は社会的に日本の生産に現れた婦人の地位を高める条件としては、ちっとも蓄積されていない。 例えば今日ではもう昔の物語になっ・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・ 科学教育のことが云われるからには、有益な科学の原理的な知識とともに、無私なよい観察者としての能力と、独創性を発揮するに足りるだけの周密、動的な推理の力とを二本の脚とする科学の精神が、あらゆる男女の心に培かわれてゆくことを願っていいので・・・ 宮本百合子 「科学の精神を」
出典:青空文庫