・・・三昼夜と七時間半も踊りつづける間に、睡眠はもちろん不可能であるが、食事や用便はどういうふうにしたものか聞きたいものである。 これに似たのでは八十二時間ピアノをひき通したというのがある。この男の商売が屠牛業であるのがおもしろい。しかしこれ・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・看守が用便中のものを監視する為の仕かけである。窓のない暗い便所にかがんでいる間、自分の頭は細かくいろいろな方面に働いた。そして、聞いたばかりの短い言葉から推察されるあらゆる外の情勢を理解しようとして貪慾になった。出て来て手を洗いながら又訊い・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・時間ぎめで、順ぐり用便させるとき、すこし手間をかけている男に、きくにたえない悪罵をあびせながら、水道栓にホースをつけて、かがんでいる者の頭の上から水をぶっかけた。どこでも、女のためにはいくらかの心づかいをして、たとえば、朝おきたばかりのとき・・・ 宮本百合子 「本郷の名物」
出典:青空文庫