・・・ 午前五時、午前九時、正午十二時、午後三時、午後六時には取入口から水路、発電所、堰堤と、各所から凄じい発破の轟音が起った。沢庵漬の重石程な岩石の破片が数町離れた農家の屋根を抜けて、囲炉裏へ飛び込んだ。 農民は駐在所へ苦情を持ち込んだ・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・「おお、発破だぞ。知らないふりしてろ。石とりやめで早ぐみんな下流ささがれ。」そこでみんなは、なるべくそっちを見ないふりをしながら、いっしょに砥石をひろったり、鶺鴒を追ったりして、発破のことなぞ、すこしも気がつかないふりをしていました。・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・「発破だよ、発破だよ。」カムパネルラはこおどりしました。 その柱のようになった水は見えなくなり大きな鮭や鱒がきらっきらっと白く腹を光らせて空中に抛り出されて円い輪を描いてまた水に落ちました。ジョバンニはもうはねあがりたいくらい気持が・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・ ぼくらが、さいかち淵で泳いでいると、発破をかけに、大人も来るからおもしろい。今日のひるまもやって来た。 石神の庄助がさきに立って、そのあとから、練瓦場の人たちが三人ばかり、肌ぬぎになったり、網を持ったりして、河原のねむの木のとこを・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・「何時だがの狐みだいに口発破などさ罹ってあ、つまらないもな、高で栃の団子などでよ。」「そだそだ、全ぐだ。」 こんなことばも聞きました。「生ぎものだがも知れないじゃい。」「うん。生ぎものらしどごもあるな。」 こんなこと・・・ 宮沢賢治 「鹿踊りのはじまり」
出典:青空文庫