・・・をしたり、百人一首をしたり、饅頭など御馳走になったりしたことがあるが、たいていは林が私の家へくる方が多かった。だって私は妹の守りをすることもあるし、忙がしいのだから、一緒になるにはそれより方法がないからだ。 ときどきは、私と一緒にこんに・・・ 徳永直 「こんにゃく売り」
・・・手形、証文、受取書にこれを用いず。百人一首はもとより、草双紙その他、民間の読本には全く字を用いずして平仮名のみのものもあり。また、在町の表通りを見ても、店の看板、提灯、行灯等の印にも、絶えて片仮名を用いず。日本国中の立場・居酒屋に、めし、に・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・少年の読む雑誌もなければ、巌谷小波君のお伽話もない時代に生れたので、お祖母さまがおよめ入の時に持って来られたと云う百人一首やら、お祖父さまが義太夫を語られた時の記念に残っている浄瑠璃本やら、謡曲の筋書をした絵本やら、そんなものを有るに任せて・・・ 森鴎外 「サフラン」
出典:青空文庫